ハワイアンジュエリーの定義 | PUA ALLY(プアアリ)東京都・渋谷区

1.偽物のハワイアンジュエリーがある?

 
こんにちは、ハワイアンジュエリー専門店“プアアリ”のエングレーバー(彫師)のT.Matsuoです。いつも工房でハワイアンの模様を様々なジュエリーに彫り入れしている日々を過ごしています。
 
先日、あるお客様がご来店され質問をお店のスタッフが受けました。どんな質問かというと・・・
 
横浜の元町のあるハワイアンジュエリー専門店に足を運んだ時のお話だったそうです。
 
本物のハワイアンジュエリーはオーダーメイドで作っているものを指す。
ネットなどで販売されているハワイアンジュエリーはすべて偽物です。
当店は全てオーダーメイドで作っているので本物です。
 
というお話をされたという事でした。
そして、私たちにこんな質問をされました。
 
「プアアリさんのハワイアンジュエリーは本物ですか?」
 
という質問です。
 
そのお客様はハワイアンジュエリー専門店のスタッフに、”本物とはオーダーメイドで作られたものだけが本物”という風に教えられての質問でした。
 
うちのスタッフもこんなストレートな質問にどうやって答えればいいのか迷った挙句丁寧に対応して納得してもらいました。ということでした。
 
そんな事があったという話を聞いて、僕がその質問を真剣に考えて答えてみたいと思います。
 
 

2.そもそもハワイアンジュエリーの定義とは?

 
まず本物・偽物というのが果たしてあるのか?という事を考えてみました。
そもそも私たちが考えるハワイアンジュエリーの定義とは、ハワイアンジュエリーに彫り込まれている模様にある。と考えています。
 
私達がお客様に伝えているハワイアンジュエリーの歴史を見てもらえるとその根拠がわかると思います。
 
ハワイアンジュエリーの歴史
 
模様には意味があり、その意味をお客様に伝えていく事が、私たちのブランドの使命でもある。と考えているぐらいです。
 
意味を知りたい方はここをクリック!
 
実はこの本物・偽物問題。私たちが東京の恵比寿で工房を併設したブランドショップを立ち上げた2005年に似たような疑問を投げかけられた事もあるのです。
 
ハワイアンジュエリーなのに、日本の工房で作る。という事はどういう事なのか。
ハワイアンジュエリーなのに、日本人が作る。という事はどういう事のなのか。
 
日本で、日本人が作ったハワイアンジュエリーといわれるものは本物ではない。と言われてしまうのか?

3.恵比寿で日本人がハワイアンジュエリーを作る。それは本物なのか?

 
僕自身がハワイのオアフやマウイに足を運び、みんながよく知っているハワイアンジュエリーの工房をいくつも見てきたからこそ言える確信が実はありました。
 
そもそもハワイアンジュエリーを作っている工房の中で働いている人たちの国籍は?
 
そうなんです。アメリカという国は多民族国家です。僕が知っている限り、ハワイ人という人はいなくて、韓国・フィリピン・タイ・もちろんアメリカ人・そして日本人。いろいろな国の人が工房ではジュエリーを作っていたのです。
 
ハワイでフィリピン人が作っているものはハワイアンジュエリーとして認識されている。
ハワイで日本人が作っているジュエリーはハワイアンジュエリーとして認識されている。
 
という事を知っていたので、日本人がつくる。という事は安心につながる事になっても不安につながる事はない。と確信していました。
 
そして、もうひとつ日本でつくる。これが受け入れてもらえるのか?
 
実はこの疑問にも僕たちが自信をもって大丈夫。と言える理由があったんです。みなさんもハワイアンジュエリーと少し検索をしてみてほしいんです。例えばうちで数万円するようなデザインのハワイアンジュエリーが数千円で販売しているお店をいくつも見つけることができるんです。
 
なぜ、同じようなデザインで同じような素材なのにこのような価格の違いがでるのか、不思議に思う人もいると思います。
 
この価格差の秘密を今日は少し伝えさせてください。
 

4.産地が違うハワイアンジュエリーもある。

 
実は、うちのブランドにも何度か産地が違うハワイアンジュエリーの卸販売の営業が売り込みにきてくれた事もあるんです。
 
僕たちのお店に営業しにきてくれた人は、とにかく低価格でハワインジュエリーを卸せるから、プアアリでも取り扱って欲しい。というお話でした。
 
実はそのハワイアンジュエリーは中国で作っている。という事でした。いろいろな所に卸している事と、一番の卸先が実はハワイだという事でした。
 
ハワイでたくさん卸していてすごく売れている。だから、恵比寿でも売れる。という事でした。僕たちのブランドのスタンスをしっかり伝えて丁重にお断りをさせていただきました。
 
でも、このような生産工程を経て生み出されたハワイアンジュエリーは偽物なのか?というと、私たちはそのように考えていません。
 
中国や東南アジアなどの、工賃が格安でつくれる国でつくり、ハワイの各お店に卸し、それを気軽な価格で購入してもらう。大量生産大量販売のおかげで、あまり予算が少ない人たちにも気軽にハワイアンジュエリーを楽しんでもらうことができているのです。逆にこの産地が違う、ハワイで売られているハワイアンジュエリーが無かったのなら、今あるハワイアンジュエリー人気は生まれていなかった。と言っても過言ではないかもしれません。
 
いまでもハワイにはいろいろな国のハワイアンショップのバイヤーさんが、低価格の産地が特別なハワイアンジュリーを買い付ける事ができる専門店もあるぐらいです。
 
そしてそのバイヤーさんが伝えていることは、「ハワイから直接買い付けている」というキーワードです。嘘はないのです。本当にわざわざハワイにまで行って買い付けをしているのですから。
 
でも、そのハワイアンジュエリーはハワイ以外の場所で作られているものがある。という事なのです。少しだけ、元町の専門店の人が伝えたかった事は、この事を間違えて伝えているお店があるからかもしれません。
 
ハワイに買い付けに行っているから、ハワイで作られている。と勘違いしてしまっている人がほんの少しだけいる。という事なのです。
 
これはジュエリー業界の構造的な問題でもあるかもしれません。ジュエリーに産地は書かれていない。という事です。
 
実はみんなが驚くようなフランスやイタリアのスーパーブランドのジュエリーも中国などで作られてたり、あのアメリカ発のスーパーブランドの商品も日本の山梨県で作られている。という事実もあるぐらいです。
 
偽物というより、製造工程や生産地が間違って伝わってしまっているハワイアンジュエリーがある。という感じなのかもしれません。
 
ここで、少しつけ足しておくと、ハワイアンジュエリーには実はいくつかの作り方があるんです。プアアリのようなブランドもあれば、驚くほど安いハワイアンジュエリーショップもあります。
 
なぜこのような価格差が生まれてしますのかを解説します。
 
まず一つ目の作り方

5.鍛造(たんぞう)製法

 
これは、地金(じがね)と言われる、金やプラチナや銀を直接曲げたり、叩いたりして作り上げていく方法です。プアアリのブライダルリングは全てこの製法で作られています。
 
曲げて、叩いて、整えて、形を作り上げていきます。一番時間と手間がかかる製法です。昔は今みたいに工具や設備がなかったので、ほぼ全てのジュエリーがこの製法で作られている。と言っても言い過ぎではないかもしれません。
 
この製法の良い所はとにかく金属に硬さが出るのです。特にハワイアンジュエリーは模様を彫ることを前提にベースが作られています。硬い素材であればあるほど、実は彫り上げた模様が長期に渡り美しい状態を維持することができます。
 
また、鏨(たがね)と言われる彫刻刀のようなものでひと彫りひと彫り彫り上げていくのですが、彫られる瞬間に表面が圧迫されてさらに輝きが増していくのもこの製法の特徴です。
 
悪い所はとにかく手間がかかる。という所です。実はハワイアンジュエリーというカテゴリーはゼクシィなどのブライダルジュエリーの情報誌にも無いという事をご存知でしょうか?
 
なぜ、こんなに認知されているハワイアンジュエリーを大企業が参入してこれないのかというと、この手間にあるのです。
 
昔ながらのハワイアンジュエリーはひと彫りひと彫り彫り上げていくので、大量生産に向いていない。というよりこの製法では大量生産はできない。と言ってもいいかもしれません。
 
そこで、この鍛造ではない、製法が編み出されてきたのです。
 
2つめの作り方

6.鋳造(ちゅうぞう)製法

 
いま世の中にあるジュエリーはほぼこの製法で作られている。と言ってもいいかもしれません。簡単にこの製法の特徴をいうと、たくさんコピーを作ることができる。というメリットがある。という事なんです。
 
例えばハワイアンジュエリーで言うと・・・
 
原型と言われるマスターピースは鍛造(たんぞう)製法でつくられます。ブランドにもよるのですが、技術が高い職人がひと彫りひと彫り彫り上げて作られているはずです。
 
この次の工程が鋳造(ちゅうぞう)製法ならではの工程です。
 
この金属原型の型をとって、たくさんのWAX原型をつくり、そこから鋳型(いがた)に溶けた金属を流し込んで作られていく製法です。
 
この製法の良い所は、熟練の職人が必要なのは原型制作においてのみで、量産過程では職人がいらない。というのが大量生産を可能にした理由でもあるのです。職人が必要ないという事は、安価で商品を提供できるようになった。という事でもあります。
 
この製法が無かったら、低価格で気軽に身に着ける事ができるジュエリーやアクセサリーは世の中に無かった。と言ってもいいぐらい画期的な製法なのです。
 
この(ちゅうぞう)製法により、ハワイでもハワイアンジュエリーが気軽なお土産品と育っていったのです。
 
この製法の良い所はとにかく安価に大量生産ができる。という事なのですが、少しだけ問題も発生してしまいます。それは、この鋳造(ちゅうぞう)でつくられた製品には向き不向きがある。という事です。
 
一つ目の違いは金属が鍛造(たんぞう)に比べてふんわりしている。という事です。叩いて叩いて圧縮されて出来上がった鍛造(たんぞう)製法に比べて、鋳造(ちゅうぞう)製法は溶けた金属を型に流し込んで作られているので、その2つを比べると硬さが全然違うんです。
 
柔らかいという事は傷が付きやすい。模様が消えやすいというデメリットが発生してしまうのです。ペンダントなどはあまり何かにぶつかるという事は少ないのですが、リングの場合は、常にいろいろな所にぶつかってしまうので、特にハワイアンジュエリーの場合は早く模様が消えて行ってしまうのです。
 
そして、2つ目の違いは、鋳造(ちゅうぞう)で作られた製品は型から外した時に、その表面は非常にざらざらしていて、白い粉がかかっているような状態で出来上がってきます。
 
この状態から、磨き上げていかないといけないのですが、一般的なジュエリーであれば気にならないのですが、ハワイアンジュエリーにおいては鍛造(たんぞう)と鋳造(ちゅうぞう)の違いがここでも大きく出てしまうのです。

7.磨くという事は削るという事

 
磨くという事は、実は削るという事なんです。少しずつ削って白いざらざらした表面をピカピカの表面にしていくのです。
 
しかし、鏨(たがね)彫り上げられているハワインジュエリーは磨けない場所がたくさん出てしまうのです。それは、彫り上げた模様の一番深いところが磨けないので、そこが白く残ってしまうのです。
 
ハワイアンジュエリーに詳しい人が見れば、鋳造(ちゅうぞう)で作られたものと鍛造(たんぞう)で作られたものを簡単に見分ける事ができるのは、一番深いとこをチェックすればすぐにわかるのです。
 
また、この削る作業により、模様がどんどん薄くなってしまうのも、長期に渡り受け継がれているハワイアンジュエリーにおいては残念な事になってしまう可能性が高いのです。
 
ただやっぱり、鋳造(ちゅうぞう)製法はいくつかのデメリットはあるものの、とにかく高額になってしまいがちなハワイアンジュエリーを安価にすることができた。というのが、とても高く評価されるべきなのでは、と私達のブランドでは考えているのです。
 
3つ目の作り方

8.ハイブリット製法

 
鋳造(ちゅうぞう)で作られたハワイアンジュエリーはどうしても磨けない場所が白く残ってしまい、美しく見えない。という問題を解決するために出来たのが、このハイブリッド製法です。
 
また、鍛造(たんぞう)の工程で作られた何も無いリングやネックレスのベースに彫る。という技術は熟練の職人が必要なのですが、このハイブリッド製法もこの部分の質を少し下げる事ができる製法なのです。
 
ハイブリッド製法は見た目の改善と職人の質問題を解決してくれる製法
 
どういう事かというと、鋳造でコピーされた製品を磨き上げた後に、もう一度模様に沿って彫る。という鋳造と鍛造の良い所を合わせたものがこの第三の製法なのです。
 
見た目は鍛造(たんぞう)製法のクオリティーに近づける事ができます。
もちろん鍛造(たんぞう)よりも安価につくれます。
 
綺麗で安価というのがこのハイブリッド製法の魅力です。
 
ただ、一つだけ解決できない問題が残るのです。それは、地金(じがね)の硬さです。やはり、溶けた金属を流し込んで作られたベースなので、ふんわりしているのです。という事は、傷が付きやすく、長期間美しい模様を残す。というのには、どうしても鍛造(たんぞう)には勝てない。という問題が残ってしまうのです。

9.まとめ

 
実はハワイアンジュエリーに偽物なんて存在しない。というのが私達のブランドの見解です。いろいろな工程で作られてメリット・デメリットをしっかりと比べてなるべく多くの人にハワイアンジュエリーに込められているメッセージを大切にしてもらいたいと思っています。
 
ただ、みなさんに気を付けてもらい事があるとすれば、ここで説明をした違いをわざと隠して販売しようとしているブランドは無いと信じていますが、販売スタッフによっては、高いノルマを与えられてしまっているために、事実と違う情報を流してしまっているという事を聞くことがあるのも事実です。
 
偽物のハワイアンジュエリーというより、製法の違いを知らないのを良いことに、品質とのバランスが取れていないハワイアンジュエリーの金額を提示されてしまった人もいる。という事なのかと思います。
 
ハワイで作っている。
ハワイに工場がある。
 
この話をする人たちにはハワイのどこに工場があるのかを聞いてみると、しっかりと答えられる人と答えられない人がいるはずです。今はグーグルマップもあるので、簡単に調べる事ができる時代です。
 
ちなみにハワイの工場にはたくさんのブランドの工場をやっている工場もあるので、違うブランドなのに、工場が同じ。とう事もあります。同じ品質であれば、低価格で購入できるほうがお得だと思います。そんな事も楽しみながらいろいろと聞いてみるといいと思います。
 
できれば、多くの人がハワイアンジュエリーのメッセージを伝えてくれる人になってもらいたいと私たちは考えて毎日ハワイアンジュエリーを東京の恵比寿でつくっているのです。
 
そして指輪やブライダルジュエリーなどは鍛造(たんぞう)を選ぶことをお勧めします。その理由はここに書いてきたとおりだからです。どちらが良くてどちらが悪いというのではなく、アイテムによって使い分ける。というのが正解だと考えています。
 
私達のブランドでも鍛造も鋳造も上手に使い分けているので、ぜひスタッフにその違いを聞いてみてください。


 
Master Engraver
TAKUMA MATSUO
 

ハワイアンジュエリーの伝統的な美しさに魅せられ、ジュエリークリエイターとして活躍中にオアフ・マウイにてハワイアンジュエリーの修行を行う。
 
国内外を問わずトラディショナルエングレーバーとしてグローバルな活躍を見せる。